大子町俳句ポスト年間入選句令和2年度

一般の部

大賞

〈評〉
冬のとりわけ極寒の日に久慈川で見られる独特の現象「シガ」、これは私もその風土性に特に注目をしている。この作品はその特性を見事にとらえている。そのかがやきが「橋裏」に光を当てたというのである。あの水底から湧き上がる氷、それがきらきらと橋裏を照らしているという。あの幻想的な情景に橋を加えて現場性を強めている。一気に言い下しているリズムもこそ作品にふさわしいと思う。こうした大子独特の作品を大切にしたい。(今瀬剛一)

優秀賞

シガ流る水害の跡生々し ／大森保夫(茨城県久慈郡大子町)
復興の町にひひなの笑顔あり ／藤田恵美子(茨城県久慈郡大子町)
青葉滝光りの筋となりて落つ ／岡崎桂子(茨城県水戸市)
梅匂ふ俳句ポストのあたりまで ／佐川まさゆき(茨城県日立市)
放たれて川のひかりとなりし鮎 ／菊池二三夫(茨城県日立市)
茶畑は八十八夜の風の中 ／渡辺彰(茨城県北茨城市)
花吹雪牛舎出ていく牛の背に ／西形知子(栃木県塩谷郡高根沢町)
万緑の滝轟々と観瀑台 ／関口義一(茨城県高萩市)

轟音の世界となりて滝見台 ／吉澤洋美(茨城県筑西市)
日の差して凍滝に青生まれけり ／鈴木眞知美(茨城県水戸市)
鐘の音や月居山の秋惜しむ ／益子友子(茨城県久慈郡大子町)
断崖に香りたつなり百合の花 ／小口隆光(茨城県常陸大宮市)
滝暮れて夜霧の月居峠かな ／佐藤史郎(茨城県久慈郡大子町)
奥久慈の闇の深さよ螢狩 ／酒井道子(神奈川県横須賀市)
奥久慈の民話に和む掘炬燵 ／鈴木盛雄(茨城県常陸太田市)

中・高生の部

大賞

〈評〉
糸井さんのこの作品はいかにも中学生らしい目で「八溝山」をとらえています。「青くそびえる」という表現がこの作品の眼目だと思います。なぜ青いのでしょう、それは直接的には梅雨空のもとだからでしょう。奥久慈の山並みは雨に洗われていたのかも知れません。青々とした木々の葉が山全体を包んでいたのかも知れません。いかにも大きい、どっしりとした「八溝山」を思います。ふるさとを愛しているからこそこの様な表現ができるのです。(今瀬剛一)

優秀賞

雪達磨悲しい顔して溶けてゆく ／益子諒汰(茨城県久慈郡大子町)
春になり春風が押す僕のこと ／小室幸明(茨城県久慈郡大子町)
手を広げ春光を抱く若き芽よ ／鈴木陽暉(茨城県久慈郡大子町)

目前の大きな背中の卒業生 ／鴨志田航大(茨城県久慈郡大子町)
五月晴れ僕の心もさわやかに ／菊池優紀(茨城県久慈郡大子町)

小学生の部

大賞

〈評〉
小学生らしいとてもいい作品です。何よりも菊池君自身の本当の思いを表現しているところがいいと思います。周辺を山々に囲まれている美しい大子町、そこを吹く風は確かに「やまかぜ」です。その風に誘われる様にして桜は咲いているのでしょう。「さくらのはなをつれてくる」という言葉その通りですね。感じたことを素直に表現していて立派です。(今瀬剛一)

優秀賞

入学式出むかえたのはさくらの木 ／西山実希(茨城県久慈郡大子町)
流れ星どこから来るのおしえてよ ／生井澤唯(茨城県久慈郡大子町)
雪虫は白くて雪にみえてくる ／藤田凛華(茨城県久慈郡大子町)

朝日さし光かがやく氷柱たち ／根本絆(茨城県久慈郡大子町)
久慈川をながめる先にしがの列 ／菊池櫂斗(茨城県久慈郡大子町)

過去の入選句

皆様からの作品を募集しています

大子町は、自然豊かな山々と温泉、そして久慈川の清流など、素晴らしい資源に恵まれており、多くの俳句愛好者の方々にご来町いただいています。
自然の中での甘い語らい、美味しい郷土料理、四季折々の産物との出会いなど、その様々な情景を気軽に詠んでいただけるよう、町内15箇所（学校関係を除く）に投句箱を設置して作品を募っています。
皆様から投句いただいた作品は、年間三回にわたり選句し、その中から特に優秀である年間入選作品を句集として纏め広く配布し、多くの方々に親しまれ愛読されています。俳句の約束、五、七、五のリズムに乗せて、感じたままをいっぱい詩って奥久慈大子をより一層賑わせてください。