大子町俳句ポスト年間入選句令和3年度

一般の部

大賞

〈評〉
大きい作品です。しかも絵画的で、情景がありありと見えてきます。正面に男体山がくっきりと見えているのです。作者の周辺は一面の葱畑、その葱の畝が真っ直ぐに男体山へ向かって伸びている様に感じられます。「葱」は言うまでもなく冬の季語です。したがってその引き締まった寒気の中青々と続く「葱の畝」は印象的です。遠く堂々と聳える男体山がくっきりと見えてきます。遠近の対比、色彩の鮮やかさ、見事な表現だと思います。(今瀬剛一)

優秀賞

四度の滝もつとも激つ四段目 ／平野暢行(栃木県宇都宮市)
春光を束ねて滝の落ちにけり ／阿部怜児(埼玉県戸田市)
奥久慈のどの径ゆくも曼珠沙華 ／中原ひそむ(茨城県北茨城市)
水郡線全線開通つばめ飛ぶ ／照沼朗男(茨城県那珂郡東海村)
どこまでもつづく緑の大子かな ／浜田サト(茨城県笠間市)
がつしりと岩膚摑み瀧凍る ／小口隆光(茨城県常陸大宮市)
のぼり旗立てて奥久慈りんご売る ／池内ひろし(東京都世田谷区)
袋田のしぶき冷たき滝見台 ／柴田葉月(茨城県ひたちなか市)

先の水追ひかける水滝落ちる ／釜田眞吾(埼玉県さいたま市)
幾すぢの滝の流れの遅速かな ／若松明弘(神奈川県藤沢市)
袋田の滝の落差や秋の暮 ／斉藤博之(埼玉県さいたま市)
山間の日差し大事に胡麻を干す ／奥村雄治(茨城県笠間市)
氷瀑に立ちて鼓動の高鳴りし ／益子須美子(茨城県久慈郡大子町)
袋田の滝へしだるる天の川 ／菊池二三夫(茨城県日立市)
その先へ往く道のありソバの花 ／佐川まさゆき(茨城県日立市)

中・高生の部

大賞

〈評〉
小室さんの作品は新学期を迎える緊張感をよくとらえています。おそらく朝ではないでしょうか、外へ一歩踏み出すと春の風が快く吹いていたのです。その風の中新しい一歩を踏み出す思いを「春風に背中押される」と表現しました。見事な表現だと思います。吹く風までが自分の力になってくれそうに感じたのでしょう、作者の心がこの「春風」を感じた一歩に感じられます。あたたかい期待感いっぱいの出発だったのではないでしょうか。(今瀬剛一)

優秀賞

雪の道いたるところに足跡が ／石井旬(茨城県久慈郡大子町)
しゃぼん玉強く生きてと息を吹く ／藤田和花(茨城県久慈郡大子町)
一緒にと走る私と渡り鳥 ／黒田小裕嘉(茨城県久慈郡大子町)

赤とんぼ走る自分の先を飛ぶ ／菊池優紀(茨城県久慈郡大子町)
暗がりにまぶしいほどの星月夜 ／加藤碧乃(茨城県久慈郡大子町)

小学生の部

大賞

〈評〉
平山さんの作品は小学生らしい純粋な「春の月」の表現だと思いました。空に浮かんでいる「春の月」、その色を自分の言葉で「ぼんやりとぬくもりある」としてその独特の色合いを表現しました。見事です。俳句はこの様に感じたことを自分のことばで表現することが大切なのです。全体ぼおっとしてたのでしょう、それでいて何となくぬくもりを感じさせる様な色合い、この表現から私も確かに「春の月」独特の色合いを感じ取りました。(今瀬剛一)

優秀賞

山の中どんぐりいっぱいひろったよ ／髙信亮太(茨城県久慈郡大子町)
りんごぶろりんごうかべるいいにおい ／藤田健造(茨城県久慈郡大子町)
秋の山いろんな色がまざりあう ／菊池秀義(茨城県久慈郡大子町)

ほんのりと上から色づくいちょうの葉 ／白井悠惺(茨城県久慈郡大子町)
月光が夜道をてらし輝くよ ／小室優斗(茨城県久慈郡大子町)

過去の入選句

皆様からの作品を募集しています

大子町は、自然豊かな山々と温泉、そして久慈川の清流など、素晴らしい資源に恵まれており、多くの俳句愛好者の方々にご来町いただいています。
自然の中での甘い語らい、美味しい郷土料理、四季折々の産物との出会いなど、その様々な情景を気軽に詠んでいただけるよう、町内15箇所（学校関係を除く）に投句箱を設置して作品を募っています。
皆様から投句いただいた作品は、年間三回にわたり選句し、その中から特に優秀である年間入選作品を句集として纏め広く配布し、多くの方々に親しまれ愛読されています。俳句の約束、五、七、五のリズムに乗せて、感じたままをいっぱい詩って奥久慈大子をより一層賑わせてください。